ネットショップ

順調だったネットショップはこうして潰れる┃送料無料の危険性とは

こんにちはタイゾーです。

先日楽天市場ファッションジャンルで有名だった店舗が閉店しました、原因は倒産だそうです。

東京商工リサーチの調べでは通販小売業の倒産件数が過去最多を記録しました。

2015年度(2015年4月-2016年3月)の通信販売・訪問販売小売業の倒産は74件(前年度比25.4%増、前年度59件)に達した。これは調査を開始した2009年度以降では2014年度(59件)を上回り、年度ベースでは過去最多になった。

情報源: 2015年度「通信販売・訪問販売小売業」の倒産状況 : 東京商工リサーチ

12年程前から始まった楽天市場を始めとするネットモールの黄金期が終わりを迎えている事を意味しています。

全盛期に出店をしたお店がどんどん倒れていっている事もありますが、技術やサービスの進歩で参入障壁も下がり続けた事も起因していると思います。

今回は一件順調に見えていたショップが一瞬にして倒産してしまう事になった原因をまとめてみたいと思います。

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まずは利益率をおさらい

以前も軽く触れましたが楽天市場の場合を見てみましょう。

よくある一般的なショップを例に下記条件を設定しました。

  • 平均商品単価3,000円
  • 1注文当たりの平均金額4,500円
  • 基本送料600円
  • 5000円以上購入で送料無料
  • 商品原価率45%

ここでポイントになってくるのは個々に送料無料が設定されている商品の量です。

仕入れ単価が1,000円~2,000円の商品に対して本来回収できるはずだった送料を無料にすると、間接的な原価率が跳ね上がるのがわかります。

そこで私はいつも送料回収率といって、梱包出荷や運賃等実際に発生しているコストを顧客からどの程度回収しているかを細かく見るようにしています。自社出荷を行っているのであれば、時給換算で算出する必要があります。

送料回収率については、売れ筋商品をイベント等で送料無料にすると大きく変動するため注意が必要です。

では実際に利益率にどの程度影響をするのか見てみましょう。

送料回収率別利益率

この数値は私が今まで関わったショップの参考データから算出していますが、楽天市場において発生するロイヤリティにポイント原資や決済手数料等全ての課金を差し引いた後の利益率となっています。

先ほど上記で設定した条件に個別で送料を無料にしている商品が無い場合、大体赤字部分にある30%程度になっていました、そして回収率を上下させた場合に利益率がどうなるかを試算してあります。

送料無料設定無し 利益率 35%
送料回収率 70% 利益率 30%
送料回収率 50% 利益率 25%

あくまでも出荷運賃にかかる費用は会社によって異なるので実際に自社のデータから試算しなければいけませんが、送料の設定がどれ程利益に影響するのかがわかります。

参考までに、売れ筋商品の半分を個別送料無料にした場合利益率が10%程度低下しました。それほど送料の設定は重く影響しますので注意が必要です。

ではこの利益率で残ったお金で販管費に割ける金額を見ていきましょう。

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ネットショップ運営に必要な販管費

まずネットショップ運営に必要が業務を挙げていきます。

  • WEB制作
  • カスタマーサポート
  • 受注管理
  • 梱包出荷

大まかに見るとこのようになりますが、売れるお店作りに欠かせないのはWEB制作です。

リアル店舗であれば棚に商品を並べるだけで良いですが、ネットショップは商品のページを制作しなければなりません。写真撮影・画像加工・色補正等非常に手間がかかり、力の入った商品ページであれば1日1ページという場合もあります。

その他にもセール対応やバナーの更新等もありますので、企業として運営していくのであれば最低2名は必要となるでしょう。

カスタマーサポートと受注管理については月商500万程度まで兼務で1名でも事足ります。

出荷梱包においてはアウトソーシングをお勧めします。受注に波もありますし、これから月商1000万を目指そうというのであれば早めに頼んでおいた方が良いでしょう。出荷をアウトソースしておけば変動費に組み込めますし経営予測が楽になります。

経営者は大抵仕入れを行いますので、WEB制作2名・受注カスタマー1名が効率の良い体制と言えるでしょう。

経営者の報酬50万とスタッフ3名の人件費を法定福利費込み150万で設定すると、家賃光熱費もろもろ含めて180万。ここが利益も賞与も無く広告すら出せない最低ラインの損益分岐点となります。

売上げを上げるため送料を無料にするのは危険

先ほどの最低ラインの損益分岐点から必要な売上げが逆算できます。

月間売上 利益率 利益
500万 30% -30万
500万 25% -55万
600万 30% +-0
600万 25% -30万
800万 30% +60万
800万 25% +20万
800万 20% -20万

これは広告費が無い状態でのデータですので、月間20万の販促費を計上していればそのまま差し引いた金額が損益になります。現実的には800万以上の売上げをキープしていかなければお店の継続自体困難と言う事です。

そして注目して頂きたいのは利益率20%で800万の売上げと600万で30%の部分です。

先ほど主力品の送料を無料にしたところ1割程利益率が下がったと説明しましたが、600万の売上げを800万にするために送料無料を行うと悪手になる場合があるという事です。

1注文あたりの金額が低ければ低いほど送料は大きく損益に影響してきますので注意が必要です。

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数%の利益率変動で倒産する

このように送料無料を気軽にやってしまうと蓋を開ければ大赤字にという事が起こります。

会社の規模が大きければ大きいほどその影響は大きく、小さな資本で回している会社等は一瞬で吹き飛びます。

商品原価率の管理は当然の事、送料の回収率を同様に管理する必要があります。

利益率を10%落とすと言う事は売上げを1.5倍にしてトントンです。送料を無料にするだけで月間の売上げをそこまで安定的に上げられる事はほぼありません。

私はこういった送料無料等のサービスは処分品等に対して行うべきで、継続的に販売する売れ筋商品に対して行わない方が良いと思っています。

プロパー販売を想定して根拠のある計画を

基本的にオリジナルの主力商品は送料無料・値下げ・ポイントやクーポン等のサービスを一切行わない前提で計画を立てた方が良いです。

中には主力だからこそ送料を無料にしているお店がありますが、私は悪手としか思えません。

売れる商品は送料が有料だろうが売れます。もちろん類似品が格安で出てきた場合には対抗するしかなくなりますが、類似のレベルによっては形状模倣で警告書を送付し販売を差し止める手段も考慮に入れなければなりません。

ファッションジャンルは特にこのあたりがネックになり利益率を上げづらい部分であり、お店が潰れてしまう原因でもあります。

つまりこの業界で戦っていこうとするのであれば、独自性のある商品をどれだけ提供し続けられるかにかかっています。そしてその商品をしっかりプロパーで売る。

値下げや送料を無料にしなければならない時期が来たのであれば、それはその商品に寿命が来た証。すっぱり諦め、売り切って終わらせてしまいましょう。

終わらせる決意が生みの力になる

せっかく主力として売ってきた商品にもいつか終わりはきます。しかしそこで値下げをしつつダラダラ売るのではなく、終わらせてしまう事で変わる新商品を考えないといけない気持ちが生まれ、そしてこの新陳代謝が会社を強くしていくのだと思います。

利益少しだけど、まだもうちょっと売れるかも・・・という気持ちを押し殺し次に進む。

難しいかもしれませんが、私もそうやって頑張っていきたいと思います。

でわでわ

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ABOUT ME
父ちゃん
小さなお店を営む父ちゃんです。